東京砂漠🏜

歌職人と呼んでも彼はきっと嫌な気がしないと思うが、前川清(まえかわきよし)は独特の節回しで歌う、演歌でもポップスでもなく、その頃流行りのムード歌謡でもない、「前川清」を歌っていた。
高度成長もしてアメリカに追いつくばかりの勢いで活気ある東京と成長していたが、その陰で荒んでいく人々とその街を、cynicalにかつ paradoxicalに描いたこの「東京砂漠」は当時東京にいた青年~壮年の私にとって衝撃的な歌として大事に受け止めていた。
その実荒んでいく盛りの東京で、恋人同士が肩を寄せあって必死にまた清らかに生きていく姿が、不思議なくらいジメジメしない明日に向かって希望を忘れない、前川清にしか歌えない世界で歌っていた。

半世紀近く過ぎた今の東京は、皆、異口同音に、「東京砂漠」と誰もが思っているに違いない。
何も、東京だけではあるまい、我が名古屋も同じくだが、この「東京砂漠」に歌われる希望のような、恋人同士が肩を寄せあって生きていけたらと思うような人間愛を感じるところがいったい何処にあるというのだろう?
コロナ禍で、懐かしさからふと聴きなおした「東京砂漠」は、今からでも遅くないんだ、人生これからなんだと思い知らせてくれる歌だ。
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